患者と仲良しになる その1

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病院看護師ノセカイ

病棟看護師時代。

就職して整形外科病棟へ配属になった。
わたしが新人の頃は、「技は盗んで学べ」の時代だったから
兎にも角にも厳しかった。
「やらせてください」と事前学習をしていなければ「やる気がない」と判断される。

点滴だってなんだって、
同僚や先輩の腕を借りて練習し、OKが出れば、患者さんに行う。

新人にあたった患者さんはたまったもんじゃないよね…
あのときはありがとうございました。

初めておこなった「プラセボ」も、患者さんにバレてたらしい…
だってねー、騙すって行いがわたしには苦手過ぎた。

新人時代はあっという間に過ぎていったようにもあるし、
プリセプターという指導係の怖い先輩と勤務が合わないことを密かに安心したり。

もちろん、暇な日はない。
どんな勤務だって、常に忙しい。

今になってみれば、もっと患者さんに優しく時間かけて対応できたらよかったな、とか
偉そうな態度で接してただろうな、とか、思うことは多々ある。

でも、10年近く経ったあと、
外来勤務してたときに、外来患者さんに声かけられて、
「あのとき、お世話になって、とても助かりました」と言われたときは
わたしはわたしなりに頑張ってやってたんだなと思えた。

整形外科は、若い人も骨折や靱帯損傷などで入院することが多いし
年配の方も骨折や腰痛などで入院することが多くて
いろんな人がいた。

地域的に南米から移住してきている人もいたから
たまには、日本語が通じない人もいて、
日本語が話せるお子さんが来たときに通訳してもらったり、
日本語とポルトガル語の辞書を開いて、単語で伝えたり。

ほんと、いろんな患者さんがいた。

その中でも、
なぜか、とても感謝されて好かれることもある。

それが、若い男性ならね、恋に発展することもあるのだろうけど、
わたしはなかったな!!笑
患者さんが退院してから付き合ってた先輩や後輩などもいたけれどね。

わたしは、おじいさんやおばあさんに好かれることがわりと多くて。
退院したあとも外来の日に病棟へ上がってきてくれる人もいて。

とあるおじいさんは、奥さんと夫婦で入院していた。
おじいさんが手の骨折をして、おばあさんは腰痛があって、
おじいさんが介助できなければ、自宅でおばあさんが過ごせないからと
二人部屋に入院したのが、初めての出会いだった。

写真を撮るのが好きな人で、ベッドサイドに貼ってた金魚の写真がとても素敵で、
それを言ったら、写真をくれた。
退院したあとも看護師の写真を撮りに来てくれたり、
なぜか、わたしと同僚に立派なカメラを貸してくれて、「好きなものを撮ってこい」と言ったり。

おばあさんのことを「何もできない」と嘆いて愚痴を言うこともあった。

数年の間は、外来受診の日は病棟へ上がってきて、立ち話をするのが恒例になった。
(わたし、暇じゃないから、会いに来てくれるのは嬉しかったけど、時間はいつも気にしてた)

あるとき、
朝、出勤すると、夜勤だった先輩から
前夜、ふらっと病棟にそのおじいさんが上がってきて
「おばあさんが亡くなってしまった」と、言いにきたと。
自宅で体調不良になった奥さんが救急搬送されて、そのまま息を引き取って、
一緒についてきていたようだったと。

その数日後、
ふらっと病棟におじいさんは現れた。
いつものように立ち話になったのだけれど、元気がない。
「おばあさんがいなければ意味がない」と言われた。
あんなに愚痴言ってたのに。

それから1,2週間後、
わたしは自宅のある町で車を運転していた。

いつも通りかかる、葬儀場はつい確認してしまう。
知ってる名前が出ていないかどうか。
整形外科病棟だから、亡くなる方はほとんどいない状況だったけれど、
たまに内科の患者さんが入院することもあった。

とはいえ、わたし、整形外科病棟にいた6年間で
看取ったことがほとんどなかったな。
エンゼルケアをまともに経験することなく、別の病棟へ異動して、そこで慣れるほどの経験を積んだ。

何気なく目線を送った、葬儀場には
あの、おじいさんの名前があった。

衝撃すぎて声が出ない。
おばあさんが亡くなってから、1か月も経ってなかった。

内科にもかかってたから、相当の内服薬が処方されていた。
だけど、飲む気にもならなかったのだろう。
手がかかって大変だと言ってたけれど、奥さんの存在はとても大きいものだった。
生きる意欲がなくなってしまったようだった。

夫を亡くした妻は、その後元気に楽しむことができるというけれど、
妻を亡くした夫は、こんなにも脆いのかと思った。

うちには、おじいさんが撮った写真がいくつかある。
ポスター並に大きいのもある。
あ、病棟に飾ってたんだな、たまに新しいのをもってきて、それを入れ替えてた。

そろそろ、また出してみようかな。

忘れられない、患者さん。

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